私は電源で悩んでいました.Giga Dualは確かにCubeの内蔵12V電源だけで起動はしました.でもそれは、言うなれば最軽負荷状態、起動しただけという状態.7457の1.3GHzでの平均消費電力が19W、最大消費電力が26Wと言われているため、コア電源回路の効率を100%と仮定した場合でも、CPU1つあたり最大で12Vで2.2A、2つで4.4Aの電流を供給する必要があります.
これに対して、Cubeの電源回路で12VをレギュレートしているのはナショセミのLM2678というIC.これは仕様上では5Aまでの出力が可能ということになっていますが、それは巨大なヒートシンクを取り付けた時の話しであり、あんなにちっちゃい電源基板のパターンに逃がす熱程度では、すぐにサーマルシャットダウンがかかってしまいます.
では、外部から補助電流を注入してやって、見かけの電源容量を増やすのか.しかしこれは、私の心の中では絶対にやってはいけないタブー、禁じ手、火事のもとなのです.1つの電源系に2つの制御系が同居するということは、1つの王国に2人の王様がいるようなもので、強いものが生き残り、弱いものが死ぬ.そこまでひどくはなくても、弱いものはストレスを受け続け、その寿命を縮めることでしょう.「絶対に壊れないから」と誰かが私に保証してくれても、Cubeの電源を入れるたびに、私の心の中では「もうあかんのちゃうか?」という思いが走るにちがいありません.
じゃあ、どうすればいいんでしょうか.Cubeの内蔵12Vはコネクタやら電源パターンやらを経て、CPUカードのコア電源回路に接続されてしまっています.こいつをどうこうすることはほとんど不可能です.両面2層基板なら12Vの電源パターンを切って別の容量の大きな電源につなぎ代えるとかいうことも出来なくもないのですが、この、何層あるかすらわからないような基板には太刀打ちできません.何とか、内蔵の12Vを切り離して、容量の大きな電源につなぎ代えられないものか.うーん.
おおもとの電源基板で12Vを作っているLM2678を完全に殺してしまって、全く新しい12V電源系を作るという手もありますね.でも、スイッチング電源なんて作ってみたこともないし、評価も実験もしたことないし、だいたいAppleのエンジニアより小さくて高効率のスイッチング電源を作るだけの技量があれば、今よりもっと給料の良い仕事してるだろうしなぁ.
とりあえず、既存の12V電源がCPUカードの中にどれくらい顔を出しているのか、テスターで計ってみることにしました.すると、意外なことに、ほとんど顔を出していないのです.12Vで動いているにもかかわらず、12Vはほとんど表に出てこない.どこにつながってるのかなー、っと探していくうちに見つけたのはコア電源回路の入り口、2つの巨大FETのドレイン端子だけでした(他にもあるのかもしれないけれど、探した範囲内ではそこだけでした).お?、何かとっかりがつかめてきましたねー.この奇妙な事実を何かに使えないかなー、と考え出したわけですが、ここからが変わり者の本領発揮です.
12Vがつながっているのは、メーカの推奨回路図で言うと、上の赤丸の部分2つだけ.
実物の写真で言うと、半田がてんこ盛りになっている部分2つだけ.
CPU基板に12Vは来ている.ということは、一応電源でもあるし、内層のベタパターンで基板内にくまなく行き渡っていると思われる.でも、表に出てきているのは、2つのFETのドレインだけか.あーそれなら、FET取ってまえばいいじゃん.FETさえ基板上から無くなれば、12VはCPU基板に来ているものの、表に顔を出すことが無くなるわけで、そうすれば、来ていても来ていないのと同じと見なせるわけだ.これで内蔵の12Vは消せたな.でもFETも消えたけど.
あー消えたFETはどうしようか.これがないとコア電圧作れないし.やっぱり戻すか.でも12Vとは接続できないし.じゃあ12Vと絶縁した上で、ゲートとソースだけ接続するか.ドレインには12Vとはまた別の電源を接続するということで.なんか取って付けたような現物合わせなんだけれど、これって理屈に合っているのかな?.誰か私の考えが正しいかどうか判断してくれる人がいると楽なんだけれどなー.ま、とりあえずFET外しますか.
FET外してみました.半田吸い取り線できれいにしようと思ったのですが、電源パターンに熱を奪われて、なかなかきれいに出来ません.
パソコンショップで買ってきた、「絶縁性熱伝導シート」なるものをドレインのパターンの上に貼ります.
そのまた上に、ホームセンターで買ってきた、0.5mmの銅板を、適当な大きさに切って貼り付けます.銅板は、途中で折り曲げて、基板の裏側まで回るようにしておきます.
銅板の上にFETを半田付けします.ゲートとソースは元々あったランドに半田付けします.
私の大好きな「積層セラミックコンデンサ」の登場です.
片方の電極を出した状態で、耐熱テープで巻いて固定します.
出ている電極を半田付けします.
「積層積層セラミックコンデンサアレイ」の完成です.
基板の裏側に回っている銅板に半田付けします.
で、GNDパターンに落とします.これで、外部電力の供給点の完成です.
表から見ると、こんな感じです.
電源線を付けると、こんな感じです.適当な線がなかったので、スピーカーケーブルを2mほど付けました.
「改造拡張ヒートプレート」に取り付けます.
ロジックボードと合体しました.よしんば、負荷試験もやってみようと思っているので、今回はヒートプレートとヒートシンクの間にシリコングリスを塗ります.
Cube内に組み込まれたCPUカード.真ん中に銅板が銅色に輝いています.
供給電圧 消費電流
12V 4A弱くらい
9V 5A弱くらい
8V 5.5Aくらい
7V 6Aちょっとくらい
6V 起動せず
てな具合でした.電圧が下がれば電流が上がるという、まあ普通の特性です.ところが気になる点もいくつかありまして、例えば、メーカの推奨回路図ではVinは5V?28Vとなっているのですが、6Vでは起動しませんでした.また、CPUの負荷率に合わせて消費電流もバカバカ変わるのかと思っていたのですが、ほとんど変化無く、負荷率0%(何もしていないアイドリング状態)でも4A近く電流を消費していました.
まあ、一発起動したことですし、細かい謎は置いといて(細かくないのかもしれないですが)いろいろ楽しい実験をしてみましょう.まずはDualの確認と、体感速度の違いの確認あたりから.
基本の「システム特性」から.CPUが2つで、1.4GHzになっています.
iTunesで音楽を取り込んでみましたが、思ったほど速度が上がりません.それに、CPUの使用率もあまり高くなく、何か暇そーに変換作業をしている感じです.
ビジュアライザをフルスクリーンでやってみました.30fps近い速度が出ています.
マンデルブロの計算.これはさすがに2つともCPU使用率100%出ました.
これが計算結果.何か珍しい形です.
iDVDでモーションをONにした状態です.それでもやっぱり、結構暇そうにしています.
CDを一度ハードディスクにコピーして、それをiTunesで変換してみました.17倍速出ています.
同じく、19倍速出ています.
ビジュアライザをフルスクリーン表示にさせた直後...
アクティビティモニタのグラフを見ると、やっぱりCPUはちょっとだけ暇しています.なかなかフルパワーを絞り出すということは無いようです.
ということで、Giga Dualは内蔵12V+補助12Vではなく、完全に外部からの給電で動作させることが出来ることがわかりました.動作可能電圧にもかなり幅があります.ですから、あとは条件にあった電源装置を1つ選んで、接続するだけということになりました.これで、そうそう頭を悩ますこともないかと思います.ただし、CPUカード上で、変なところから内部の12Vに電源が回り込んでいないか、もう一度確認しておかないと、後でひどい目に会う可能性もあります.あまり浮かれてばかりもいられません.
そういえば、「爆風ファン」ですが、Giga Dualに出来るだけ負荷をかけるように実験をしている最中でも、ノーマル爆風モードのみでヒートシンクを冷たーく保っていました.「爆風ファンターボ」、「爆風ファンニトロ」は必要なさそうです.
今日は、精神的にも、肉体的にも、とても疲れました.
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