不思議な抵抗の不思議について.

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ご存じの方はご存じだと思いますが、Cubeでは外部の電源アダプタでDC28Vを作り、内部の電源基板で12V、5V、3.3Vを作っています.このうち、5Vと3.3Vは電源制御ICにスイッチング用のFETを外付けにした回路を使用しています.容量を稼ぐためですね.これに対して、比較的小容量で済む12Vはスイッチング素子内蔵型の電源ICを使用しています.LM2678S-ADJというICなのですが、私はこれがちょっと不思議なのです.

なぜならば、LM2678シリーズには、LM2678S-12という、12V出力専用のICがあるのに、なぜ、出力電圧可変型のLM2678S-ADJを使ったかということです.私なら、外付け部品も少なくて済む-12を絶対使うんですが、何で-ADJを使ったのでしょうか.こっちの方が安かったのかな?.不思議です.

さらに、このLM2678S-ADJの出力電圧を設定する2つの抵抗が、これがまたちょっと不思議なのです.

電源基板上ではR20とR21というシルクで表されている抵抗の値の比率で、LM2678S-ADJの出力電圧が決まります.LM2678S-ADJの仕様書を見ると、R20は1KΩにするのが標準だそうです.この状態で12V出力とするには、R21はだいたい9KΩくらいにする必要があります.

ご存じの方はご存じだと思いますが、チップ抵抗は、その背中に書いてある3桁の数値で抵抗値を表しています.最初の2桁が抵抗の値で、最後の1桁が抵抗値のあとに「0」をいくつ付けるかを表します.つまり、「473」と書いてあれば、抵抗値は47で0が3個付くので47000Ω=47KΩということになります.

で、R20は1KΩなので「102」、R21は9KΩなので「902」とか書いてあるのが普通なのですが、顕微鏡で拡大してみてみると、R20は「810」?、R21は「928」?.これいったい何Ωなんでしょうか.少なくとも私は読み方わかりません.電圧設定用の抵抗なので、普通とは違う精密抵抗を使っている可能性はあるのですが、それにしても、何て読むのでしょうか.不思議です.

実際に抵抗を半田で外して、テスターで値を計ると、R20は1KΩくらい、R21は9KΩくらいの値になるのですが、その抵抗値と表記してある数値との関係がどうもわかりません.

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 電源基板の端っこにあるLM2678S-ADJ.

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 その裏面に、電圧設定用の抵抗、R20とR21があります.

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 この基板では、R20は「810」、R21は「928」とかろうじて読めます.

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 この基板では、R20は、なんか読めない字が入っています.R21は「928」とはっきりと読めます.

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 「爆風ファン」の電圧と風量の関係のグラフです.13.2Vの場合、12Vに比べて、かなりの風量アップが期待できます.

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 100円玉にのっているのが抵抗値をチェックしたチップ抵抗.下に置いてある2つのチップ抵抗が今回採用するゴールデンサンプルです.

さて、私のCubeでは「爆風ファン」で冷却をしているのですが、将来的にはこのファンの電源をCubeの電源カードの12Vから取ろうと思っています(現在はUSBの5V電源を使用しています).このファン、当然12V仕様なのですが、仕様書を見ると、使用電圧範囲は「10.2V〜13.8V」.しかも、グラフを見ると、12Vと13.8Vでは風量にかなりの差があります.これは、13.8Vで使わない手はないですな.しかも、Cubeの12V出力は電圧可変型ときている.まさに願ったりかなったり.

Cubeの12V出力を13.8VにするにはR20とR21を何Ωにすればいいのか、LM2678S-ADJの仕様書を見ながら計算してみました.R20を1KΩとすると、R21は10.4KΩとなりました.当然そんな半端な抵抗はありません.一番近い値は10KΩですが、このときの出力電圧は13.3Vにしかなりません.微々たるものですが、出来ることならギリギリまで電圧をあげたい.

半固定抵抗器などで調整すると、経年変化などで接触不良を起こした時にとんでもない電圧が出る可能性があるため、これは避けたいと思います.チップ抵抗の抵抗値で調整するしかありません.

R20の値が小さいほど、R21の値が大きいほど出力電圧は上昇します.R20に1KΩ、R21に10KΩの抵抗器を使うこととし、大量のチップ抵抗の中から、もっとも値の小さなもの、大きなものを探すことにしました.これはさすがにアナログテスターでは無理なので、会社にあるデジタルマルチメータを使いました.

小一時間、ケシ粒のような抵抗器の抵抗値を計り続けて、もういいかげんイヤになった時、R20候補で最も小さい抵抗は0.987KΩ、R21候補で最も大きな抵抗は10.23KΩでした.これらの抵抗を使った時の出力電圧は13.75V.「爆風ファン」の定格いっぱいの13.8Vにほぼ近づきました.いい加減、肩のこった私はこれでよしとしました.これらの抵抗器を装着した電源基板で駆動される「爆風ファン」は「爆風ファンターボ」となるのです.

ちなみに、R21に12KΩを使った場合、出力される電圧は15.7V.これはファンの定格を超えるため、CPUがビデオのレンダリングをする場合など、長時間にわたり冷却が必要な場面では使用できませんが、短時間であれば通常ではあり得ない強烈な冷却パワーを発揮することでしょう.これを「爆風ファンニトロ」と呼ぶことにしましょう.

最後に、お仕事中にもかかわらず、抵抗の顕微鏡写真を撮ってくれたS.Kさん、大変ありがとうございました.これからもお世話になりますのでよろしくお願いします.