動くものを止めること.

最近不調で、日があいてしまいました.書くことがあまり思いつかないので、最近ニュースになっていることについて.
シンドラー社のエレベータにはさまれて、高校生の方がなくなるといういたましい事故が起きました.ニュースでは、毎日のように事故原因はどこにあるのか、といった報道がされています.
ニュースによれば、高校生の方を救助した直後に、エレベータは最上階まで急上昇して機械室にぶつかったといいます.これは人を乗せて動くものとしては考えられない動作です.

もっと一般化して言いますが、動くもの、人間を含めて、に最も必要なこととは何でしょうか.それは、所望する時にきちんと止まれることです.動くものは動くことが第一目的ですが、一番最初に出来なくてはいけないことは止まることです.そうでないと、一度動き出したら止まらない、という状況が発生してしまいます.
一度走り出したらそれっきり止まれない馬とか、走り出したら止まれない電車、走り出したら止まれない車、みんな本来の目的を超えて、何の利益も生まないものになってしまいます.動くということは正常に止まれることを大前提にしているのです.

動くだけでいいのであれば、たとえば、宇宙に向かってロケットを発射します.目的地は適当です.エンジン出力は最大にしておけば、すごいスピードが出せるでしょう.でも何の役にも立ちません.このロケットをどこかの惑星にきちんと着陸させるとなると、途端に難易度がケタ違いにアップします.動くのは簡単、でも止めるのは難しいのです.

エレベータというのは、何らかの動力でカゴを上げ下げすればいいのですから、原理は数百年前に完成していたんだそうです.でも、目的の階に正確に止めることが出来ない、事故があった時にカゴが落下する可能性が否定できない、カゴをつるすワイヤーが全部切れてもカゴが落下してはならないなど、本来のカゴを上げ下げするという目的とは全然異なった部分の作り込みが出来ずに、比較的最近まで実用化には至らなかったようです.
つまり、エレベータは制御盤が壊れようが、コンピュータソフトが誤動作しようが、停電しようが、落雷しようが、何があっても、急上昇や急降下はしないように作られているはずなんです.でも今回はしたんですねぇ.どういうことでしょうか.

シンドラー社というのは国内エレベータ市場でのシェアは1%程度だそうです.確かに町中でエレベータに乗っても、シンドラー社のエレベータなんて私は見たことがありません.しかし、公共事業でのシェアは10%を超えています.価格が安いんだそうです.国内メーカに比べて2〜3割も安いとか.競争入札をすると、シンドラー社が勝つ事が多いと.しかし、納入時の価格だけではなく、後々のメンテナンスや安全性まで含めた競争原理の働いている一般市場では、シンドラー社は非常に弱いのです.エレベータのような人の命を預かる乗り物を競争入札で決めるというのもどうかと思ってしまいます.

ちなみに、シンドラー社、国内シェアは1%なのに、世界シェアは第2位だそうで、これも驚きです.