焼酎は中国語?

うちのテレビは録画が出来るので、電子番組表から週に一回まとめて1週間分の録画予約をします.その中の検索キーワードの1つに「銘酒」というものを入れてあります.特にBSハイビジョンですけれど、世界各国の銘酒にまつわる話をドキュメンタリータッチで描いた放送がたまにあって、それを見るのが楽しみです.ウオッカの歴史とか、ジンは飲むだけで王様気分が味わえるとか、カキにアイラモルトがあう理由とか、テキーラの原料の竜舌蘭の大きさに驚いたり、いろんなことがわかって面白いです.

そんな番組たちのなかに、先日、中国の蒸留酒についての話がありました.ちょっとミョーな雰囲気の番組だなぁと思って見ていたら、番組の最期に「中国中央電視台」って出てきたので、中国で作った番組に日本語のナレーションを入れたものだったみたいです.番組のできは置いておくとして、いろいろ知らなかったことがわかって面白かったです.

中国語で「白酒」って「パイチュウ」と読むんですけど、白酒って日本人が普通に考えたら「どぶろく」のような濁り酒を連想しますよね.中国で白酒というのは「蒸留酒」のことだそうです.蒸留したら透明で色がないでしょ.だから白い酒なんだって(日本人が出張で中国に行くと、食事の時に1:nの乾杯攻撃に使われるのが白酒ですよね).で、白酒の中でもアルコール度数が高くて、火をつけると燃えるような酒のことを「焼酒」と書いて「ショウチュウ」と呼ぶんだそうです.それって日本の焼酎の語源なんじゃないかなと思いました.ちなみにビールはピーチュウということで、「酒」という字は「チュウ」と読むみたいです.日本では酒の呼び名に「チュウ」が付くのは焼酎くらいですかね.

その番組は、マオタイ酒のことについての番組でした.マオタイ酒って「くっさいお酒」という話を聞いたことがあるくらいで、どういうものか知らなかったのですが、1915年にアメリカであった万博に出品して金賞を取ったらしいですね.ウイスキーとかブランデーとかある中で金賞を取ったのですから、きっと美味しいんでしょう.で、そのマオタイ酒ですが、マオタイ村というところで作られる白酒だから、マオタイ酒らしいです.地名なんですね.麹は麦で、主原料はコーリャンだそうです.麹を作るときの麹踏みは、生娘が素足でしないといけないんだそうです.マオタイ酒は中国の国酒といわれていて、中国政府はマオタイ酒の製造方法を国家機密にしているそうです.ヨーロッパの修道院のリキュールみたいですね.国家機密ですから、その番組でもマオタイ酒の詳しい製造過程は紹介されていなかったのですが、中国政府がマオタイ酒の大量生産をするために、マオタイ村の近くにマオタイ村の土を敷き詰めた大工場を作ったんだそうです.でも、けっきょくその工場では、マオタイ酒らしいお酒を造ることは出来なかったそうです.計画失敗です.マオタイ酒はマオタイ村の地理的条件が必須ということのようです.だからマオタイ酒はいまだに大量生産が出来ないと、そういうことでした.

日本と中国は地理的にも近く、古くは進んだ中国の文化を日本が積極的に取り入れていた時代もありましたから、酒造りについても中国の影響を強く受けるかと思いきや、日本では世界的にも珍しい、米から造る日本酒がメジャーですよね.しかも、ワインのような果実(糖分を含んでいる)ではなく、米という穀類(糖分を含んでいない)から醸造する酒としては世界最高レベルのアルコール度数を誇ります.蒸留酒であれば度数はいくらでも上げられますけどね.日本のお酒は、古い文献(古事記か日本書紀か忘れました)に、須須許里(すすこり)という朝鮮半島から渡ってきた人が初めに造ったとあるそうです.でも、朝鮮半島のお酒の多くは麦麹なのに対して、日本酒は米麹ですから、日本酒を最初に造ったのは須須許里とはちゃうんちゃうんか、という話もあるようです.

まあ、お酒は、音楽と宗教と並んで、人間が文字を持つ前から続いている、まさにその土地の文化ですから、きちんと継承をして次の世代に受け渡してもらいたいですね.そのためにも、皆さんで日本酒を飲む(消費する)ことで、酒蔵をバックアップしましょう.あ、でも、マオタイ酒も1回くらいは飲んでみたいかな(ただし本物に限る).あ、それから、名探偵コナンに出てきた白乾児(パイカル)も飲んでみたい.