立山三山縦走?.

富山に住むことの利点の一つに、あの国定公園である「立山」にひょいと行ってくることが出来る、というのがあります(まあ、ひょいと行けるのは室堂までですけれど).夕方のニュースの天気予報を見ていて、「あ、あした天気がよさそうなんで、ちょっと立山に行ってくるわ」っていう感じです.天気に合わせて行く日を決めることが出来る.うちから黒部立山アルペンルートの出発点の立山駅までは、車で1時間足らずですから.で、天気のいい日を選んで立山に行ってきました.じつは10年ほど前にも、嫁さんと二人で立山の雄山までは行ったことがあったのです.行って帰ってくるだけだっていうから、装備も何も持たずに普通の靴を履いていったのですが、雄山の山頂から稜線に伸びる道を見て、「ここなら行けるんとちゃうか?」と思いつつ、時間もなかったので帰ってきたということがありました.今回は、その行けそうだった道を行ってみようと思います.本屋さんに行くと、ちゃんとそれ用の地図も売っているのですね.とりあえず、室堂から一ノ越を通って雄山に登り(ここまでは10年前といっしょ)、そこから稜線を行って、剣御前小屋から室堂に下りるというルートを選びました.


日帰りですから、なるべく時間をたくさん確保したいので、立山駅のケーブルカーには始発を狙って乗りたいところです.立山駅に問い合わせて聞いたところ、始発は640分ということでした.でも、切符売り場が開くのが5時50分で、その時点で切符売り場の前には行列が出来ているそうです.そんな、出発の1時間以上も前から並ぶ気にはなれませんので、5時50分に立山駅到着を目指して出発しました.


時間通り到着して、なんとか一番近い駐車場に車を止められたのですが、切符売り場には行列が出来ていて切符を買ったのが6時ちょうどくらい.で、すでに満員で始発には乗れず、その次にも乗れず、3本目の7時ちょうど発の便の切符が取れました.まあ、始発に遅れること20分だけですから、時間的には問題ないでしょう.誰かと競争をしているわけでもないですし.


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切符を買った直後の立山駅入り口.あちらこちらに人がいて、ベンチはどれも満席で座ることが出来ません.ここで、持参した朝食を取っている方が多いです.とりあえず車まで戻って出発の準備をします.


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立山駅と室堂の往復切符.7時発.ちなみに、規定の時刻表はあるのですが、人が多いときには、とりあえず人がはけるまでは時刻表を無視してピストン輸送をしてくれます.


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今回のために金沢のモンベルショップで買った靴(と、靴下も).登山専用品がどれくらいの能力を発揮してくれるか期待しています.


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今回のために買った、わけではなく、これは自転車用のザックです.背中にフレームとメッシュが張ってあり、空間を取ってザックが背中に密着しないようにしてくれます.背中に空間があって空気が抜けるので、とても涼しいのです.ザックの中には2リットルの水タンクを内蔵していて、それを冷蔵庫で冷やしていたもんだから、ザックの背中が結露しています.まあ、背中に密着しないので、背中が濡れることはありません.


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そうこうしているうちに出発の時間.改札の前は登山の人ばっかりたくさん.


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これが立山ケーブルカー.でも一番大きく写っているのは資材運汎用の荷台で、奥の方に写っている部分が人間が乗る客車です.もちろん満員で座席に座ることが出来るのはごく一部の人なんですが、時間にして5分ほどなので、たったままでも大丈夫ですし、それが苦になるようでは山登りなんて出来ないですよね.


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高原バスに乗り換えて、途中、称名滝の見えるスポットでバスが止まってくれます.滝はちょうど太陽の方向なのでほとんど見えませんけど.


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弥陀ヶ原あたりですね.右側奥には富山の海まで見えているのですが、肉眼では見えても写真では無理でした.


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室堂到着です.時間は8時5分.もうこんなにたくさんの人がいます.ほぼ始発で来てもこの賑わいですからねぇ.さっそく準備をして出発です.


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すぐに歩道の脇に高山植物.名前はわかりません.高山植物って、ちっこい花が多いんですね.


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最初のうちは整備された遊歩道なんですが、石をコンクリートで固めてあり、「ハイヒールなんか履いてるやつは来るんじゃねぇ!」と主張しています.


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早くも雪の上を歩くことになったのですが、前を行く人の格好がちょっと変.頭には笠、足下はワラジ、右手に抱えているのはギターのケースです.途中、おしゃべりなおばちゃんにつかまって話しているのを聞いたところでは、ギターを持って全国を旅している途中に立山に寄ったということのようです.それならなんだか納得できます.


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前方の一番高いところに見えるのが、雄山神社の社務所ですね.とりあえずの目標地点はそこです.そこまで登るのに、それくらい時間がかかってどれくらい疲れるか.とてもしんどくてダメっぽかったら、そこから折り返して帰ることにしています(なにぶん、初めての登山なので、ペースが全くつかめていません).


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一ノ越の手前に登山の小学生の集団がいました.富山の小学生は学校行事で立山に登るんですよね.大変だわ(先生も生徒も).


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一ノ越到着.時間は8時54分.ここまでにかかった時間は50分.地図に書かれているタイムテーブルでは1時間となっているので、若干ペースが速めか.しかし、最後の登りがずいぶんきつかった.ここで小休止.


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ここから先は、ガラガラの岩場です.前回来たときには、靴の中に小石が入って気になってしょうがなかったので、今回はスパッツを用意しました.ここで装着して出発します.


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これから登る雄山方面.ガスで曇って見えません.


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ちょっと登って後ろを向くと、もうこんなに登っています.一ノ越の小屋があんなに小さくなって.いやキツいわけだわ.


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ガスがかかっていますが、雄山神社の社務所が見えます.さっきとは別の小学生登山も見えます.


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と思ったら、すぱっと晴れました.距離は近いんですけどねぇ、かなり見上げてますからねぇ.まだまだですねぇ.


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出発点の室堂方面.こういう景色を見ると、ずいぶん登った気にだけはなれます.


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こんな過酷な世界にも、植物.がんばって生きていますねぇ.


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雄山の社務所前に到着しました.時間は9時47分.一ノ越からは約45分で来ました.地図の表記では1時間です.途中、小学生登山の影響で渋滞したことを思えば、ちょっと速めのペースです.この時点で、疲れていません、大丈夫です.空気が薄いのも気になりません.天気も安定しています.ということで、縦走開始することを決定しました.


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雄山の山頂には(社務所とは別に)小さなほこらがあって、なんぼかお金を払うとお祓いをしてくれるのですが(前回経験済み)、あんなものには興味が無いので、とっとと左側の縦走路に入ります.


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縦走路に入ると、パタッと人が少なくなります.こんな感じの道がずーっと続きます.


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大汝休憩所到着.10時6分.建物の中は見ずです.何があるのか見てこりゃよかった.


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 「大汝山あっち」というペイントがあります.行ってみます.


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ここが大汝山のようです.山っちゅうか岩っちゅうか.


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富士の折立です.10時36分.晴れていれば富士山が見えるらしいのですが、あいにくガスっています.


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そして、3000mを超えようかという場所にも植物が.花が咲いているってことは、虫が来るっていうことでしょうね.虫来るのかなぁ.繁殖しているってことは、実際に虫が来てるんでしょうね.花も虫もすごいなぁ.


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こんな景色を見ていると、「母を訪ねて三千里」のマルコを思い出します.


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パノラマでわかりづらいですが、右の稜線から来て、左の稜線に向かって歩いて行きます.


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雪渓から上がる湯気というか、ガスというか、蒸気というか.気温は結構高いのですが、雪渓はもちろん氷点下なので、暖かく湿った空気が雪渓の上を駆け上ってくると、必ず水蒸気が結露してガスになってしまいます.雪渓の脇で休憩すると、涼しくて快適です.


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雷鳥沢キャンプ場方面ですね、たぶん.景色はいいのですが、今でも十分しんどいのに最後はあそこまで下らなきゃならないのかと思うと、ちょっと気が滅入ってしまいます.本当に最後まで行けるんか?


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別山です.12時7分です.時間も時間なんで昼食にします.ザックをおろして靴ひもをゆるめて、コンビニのおにぎりと水分と、あとはチョコとかヨウカンとかの甘いものをお腹に詰め込みます.ここで地図を見ながら時間を計算してみたのですが、地図の表記でここから室堂まではざっと3時間.ここからは、ほぼずーっと下りなのですが、私は登りより下りの方がはるかに苦手でしんどいんですよね.それを考えると、ここから4時間くらいは見ておいた方が無難なところです.室堂発の最終のバスは17時くらいだったと思うので、まあ時間配分に問題はなさそうです.


ここで、ベテランのおじさんにいろいろお話を聞かせてもらいました.その方は、剣岳の初登頂の様子を描いた「点の記」という小説を読んで感動して、59歳の時に剣岳に登ったんだそうです.で、それが最後だと思っていたら、今度は「点の記」の映画を見てやっぱり感動して、昨日剣岳に登ってきたということでした.どこに登るのかと聞かれたので、じつは登山は初めてで、富山に住むからには立山には登らんとならんだろうということで、一ノ越から雄山に登って、稜線を通って剣御前小屋から室堂に帰ろうと思っていると言ったら、それは「立山三山縦走」といって、それをすれば「私は立山に登ってきた」と胸を張って言えますよと教えてくれました.また、そのルートであれば時間的にも十分余裕があるけれど、雷鳥坂の下りはかなり急なところがあるので、疲れているとちょっと危ないから気をつけた方がいいとアドバイスももらいました.


20分ほど休憩をしてからおじさんと別れて、下り道に出発です.


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途中、右側に剣岳が見えるはずなんですが、どうも雲がかかってしまってきれいに見えません.何枚も写真を撮ったのですが、一番いいのでこの程度です.しかし、振り返って自分の歩いてきた道を見て、疲労困憊している自分の様子から考えれば、剣岳という山がいかに険しいかがよくわかります.あんなところ、本当に人が登れるんだろうかと思えてしまいますが、お盆のピーク時には、山頂に入りきれないくらいの人が登るっていうんですから、凄い人はたくさんいるもんですね.


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剣御前小屋に到着しました.13時3分です.ここには公衆トイレがあります.ここまでの下りは結構なだらかで、ここから雷鳥沢キャンプ場まで一気に下る道がとても急なんですよねぇ.ああ、気が重いや.


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ここから下っていきます.はるか下に見えるのがキャンプ場です.


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なんとか下りきりましたね.いや本当にきつかった.途中の写真を撮る余裕もないくらい.時間は14時12分なので、ほぼ地図の記載通り.もう膝に力が入らなくて、ちょっとした段差を下りるだけでもコケそうになります.やっぱりストックは必需品かなぁ.でもその坂道を、40キロくらいありそうな荷物をしょって登ってくるお兄ちゃんが何人もいました.あいつらどんな体力をしているんだろうか.


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この川の水、ほとんどが雪渓からの雪解け水なんでしょうね.めちゃくちゃ冷たいです.この川の流れが称名滝になります.


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雲がだいぶん出てきたのですが、登ったところと歩いたところと下ったところが一望できました.けっこう歩いてるなぁ.


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みくりが池.もうこの辺になると、道は整備された遊歩道になっているのですが、ちょろっとした上り坂がきつくてつらくて.普通の靴で来た人が散策できるような楽ちんな道なんですが、ベンチを見つけるたびに休憩していました.とにかくもうしんどい.でも、バスターミナルまではあとちょっとです.


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15時22分ですが、もうこの時間になると、雄山の山頂は完全に雲に隠れてしまいました.おそらく雨が降っているでしょう.このあたりもそろそろ降り出しそうな雰囲気です.


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やっとゴール地点に到着しました.ちょっとね、しばらくヘタリ込んで動けませんでした.時間は15時26分.地図の表記では15時くらいには到着するはずなので、やっぱり最後にずいぶんペースが落ちました.背中に持ってきた水は、2リットルタンクに、0.75リットルのボトルが2本あったのですが、ちょうど飲み尽くしました.みんなが群がっている、目の前の湧き水をボトル1本分補充します.

バスターミナルの中にはお土産屋さんとかあって、最終バスまでは時間もあるし買い物でもして帰る予定だったんですが、そんなことはもうどうでもよくって、とにかく一番早いバスに乗り込んで帰ることにしました.

バスの乗車時間はだいたい1時間くらい.その間ずっとイスに座って休憩だったので、ケーブルカーに乗る頃にはちょっと元気が戻ってきました.車に乗って家に着いたのが18時30分くらいです.いやホント疲れましたけれど、いい経験でしたね.


ところで、表題の「立山三山」に「?」を付けてあります.帰ってきてから、山の上でおじさんに聞いた「立山三山縦走」という言葉を調べてみたのですが、なんかちょっとビミョーな感じです.一般的には、というか、多くの方は、「浄土山」、「雄山」、「別山」の3つを登るのが「立山三山縦走」としているようなのですが、私は浄土山には登っていません.また、別山も山頂に行ったと思っていたのです(別山と書いたほこらがあったところ)が、私の行ったところからちょろっと北に行ったところが本当の山頂のようでもあります.地図によって表記がいろいろです.そうすると、私は「立山三山縦走」はあと少しのところで達成できていないことになるのか.でも、「雄山」、「大汝山」、「富士の折立」の3つを「立山三山」としている表記もあります.どれが正解なんでしょうか.まあどちらにしても、浄土山の存在を知りませんでしたので、また今度ぜひ「浄土山」、「雄山」、「別山」の三山を目指してみたいです.そうすれば、間違いなく「立山三山縦走」ですから.今回でだいたいのペース配分はわかりましたので、次は気分的に余裕を持って行けそうです.


ちなみに、今回歩いたコースをGPSでとったのが以下.歩いた距離は14kmほどでした.