iPhone5について、ちょろっと語りましょう.

|カテゴリ:

このたびのiPhone5の発表を見るにつけて、落胆したという言葉は正確ではないですけれども、「ああ、やっぱりなぁ」というのが正直な感想です.スティーブ・ジョブスがいなくなると、Appleといえどもこうなってしまうんだなぁと、そんな感じです.


世の中の新製品発表では、「軽くなりました」、「小さくなりました」、「薄くなりました」、「表示能力が上がりました」、「バッテリー駆動時間が延びました」、「CPUが速くなりました」、「メモリ容量が増えました」、「新しい技術規格に対応しました」、と、これくらいでしょうか、これ以外の言葉で語られるような革新をともなう製品を見つけることは最近では非常に珍しいですけれど、今回のiPhone5も、上記した言葉でほぼすべてを語ることができるのではないでしょうか(地図アプリが新しくなったとか、Siriが高機能になったとかいうのはiPhoneの新機能ではなくて、iOSの新機能ですしね).


例えば、私がiPhone4やiPhone 4Sのデザインを見たときに感心したのが、バックパネルをガラスで作ったという点です.あのガラス、けっこうな厚みがありますよね.1mmくらいはある.その内側に強度部品としての金属パネルが貼り付けてある.ただ単に、薄く軽く小さくを目指すのであれば、あのバックパネルのガラスは不要なんです.あれを取っ払うだけで1mmくらいは薄くできるのに、あえてガラスを貼り付けてあるのは、前面とのデザインの統一性を保つためと、横から見たときの前後のデザインのバランスを保つためでしょう.日本人がデザインをすれば、サイズをできるだけ薄くするために背面は金属になり、iPhone5のような形になったと思います.そこを、「いや、ガラスじゃないとアカン!」ってこだわったのは、スティーブ・ジョブスなんでしょうね.あの人は、普通では考えられないような変なところにこだわりを持つ.でもそれは製品になってみるとイイ感じに仕上がるんです.その辺の感覚がスバラシイ.


スティーブ・ジョブスがいなくなったことで、iPhone5は普通の人から見て非常に順当に進化しました.iPhone 4Sに比べれば、技術的に確実に進歩した良い製品に仕上がっています.しかし、もしAppleがこのまま、変なこだわりを持たない、純粋に技術的にスバラシイものを作るという方向に進むのであれば、そこは日本の技術者の土俵です.いままでのAppleの製品は、スティーブ・ジョブスという変人がいたおかげで、世の中の技術者とは微妙に違う土俵で相撲を取っていました.しかし、彼が抜けたことで、純粋に技術的に優れたものを作るという方向にシフトしてくるのであれば、日本メーカもマイクロソフトも、十分に巻き返しの可能性はあると思います.


とりあえずiPhone5は魅力的な商品です.LTEに対応していますし、au版ではテザリングにも対応するみたいですしね.iPhone 4Sはまだ1年しか使っていないけれど、買い換えようか悩むくらいです.しかし、Appleの製品がこのまま変なこだわりのない製品に進化していくのかと思うと、ちょっと寂しい気もします.