久しぶりに、姫路から昔の仲間が遊びに来てくれました.さっそく魚津駅前のホテルにチェックインしてもらってから、徒歩1分の居酒屋にGo!.ここの名物は、なんといっても「ゲンゲの唐揚げ」.「ゲンゲ」についての一般的な情報はGoogle先生にまかせるとして、地元での話を一つ.「ゲンゲ」とは「下の下(げのげ)」がなまったと言われています.つまり、「もうどうしようもなく最低でしょうがないもの」という意味らしい.生息域が甘エビと重なっているため、甘エビを獲るために底引き網を入れて、甘エビに混じって大量のゲンゲが獲れたりした日にゃあ、あのヌルヌルベタベタが甘エビにからまって、商品価値をまったく無くしてしまう.なので、地元の漁師は「あぁもうやってらんねぇ!下の下の下の下の最低!」とでも言わないと気が済まないのでしょう.
そんなゲンゲですが、食べれば淡泊で美味しいことは、地元の漁師は知っていたそうです.ただ、水分が多くて腐りやすいし、あの見た目のヌルヌルベタベタで商品価値は無かったのですが、流通能力の向上とともに東京あたりにも姿を見せるようになり、いっときアホみたいに流行った「ブリのしゃぶしゃぶ」と同じように、なかなか手に入らない高級品として扱われ、「下の下」が「幻魚」なる名前に化けて取引されているようですな(東京に行ったこと無いので実態は知りませんけれど).そして魚津のこのお店の「ゲンゲの唐揚げ」は絶品なのです.わざわざこれだけを食べに来る価値あり、と言わせるくらい.
さて、目的の居酒屋さんに入ってカウンターに陣取って、メニューを見るまでもなく注文します.
「とりあえず生ビール二つと、ゲンゲの唐揚げ」
「ごめんね、いまゲンゲ無いんだよ」
「なんで、あんなもの一年中いるでしょう」
「いや、いるのはいるんだけど、底引き網が禁漁だからゲンゲは手に入らないの」
「えっ?じゃあ、このケースの中の甘エビなんかはどうやって捕ってるのさ」
「今の時期は、底引き網じゃなくてかご網で」
「はあ、そうなんですか.底引き網の禁漁期間ていつ?」
「6月から8月.だから9月になったらまた食べられるよ」
「そうなんか.ゲンゲに食べられない時期があるなんて知らんかったなぁ」
「はっはっは.兄さんまだまだ勉強不足ですな」
ということで、また一つ賢くなりました.
ゲンゲの唐揚げは食べられなかったけれど、居酒屋のカウンターは楽しい.最初におまかせで刺身の盛り合わせとビールだけ頼んでしまえば、あっという間にメニューなんかは隣の客に取られてしまって、でもカウンターの中で「はい、ブリカマ上がったよ!」とか声が聞こえると、「ブリカマあるの?ならこっちにもそれ一つ」とか、モズクがきれいなグラスに盛られているのを見ると、「そのモズクもちょうだい.2つね」とか.地元のご常連様たちが注文した美味しいものが目の前に見えるので、その中から自分好みのものを見つけて注文すればいい.そしてこのお店の良いところは、もともとはお寿司屋さんだということ.最後の締めに「おまかせで5貫お願い」とか頼んでいる人が多い.私は巻物が好きなので、「最後に鉄火巻き1本お願いします」とか言っておきながら、あんまり美味しいので結局3本も食べたりとか.巻物はやっぱり巻きたてで海苔がパリパリなのが美味しいですよね.あのパリパリ感とワサビの刺激が、酔っぱらった口に心地良いんだ.ついつい食べ過ぎてしまう.
ということで、ゲンゲは「下の下」のくせに、偉そうに食べられない時期があるということを学習しました.次に誰かが遊びに来たときには、失敗しないように覚えておこう.
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