新型コロナウイルスの騒ぎの中、3Dプリンターでマスクを作るという話をよくみます.穴の開いたマスク型のモノを3Dプリンターで作って、穴の部分にフィルターとなる布なり不織布なりを当てるというものが多いようですけど、樹脂の部分が顔にあたるというのがどうにも気になって、汗かきな私にはちょっと使うにはハードルが高いだろうと思っていました.じゃあお前はもっと良いものができるのかといえば、いくら考えてもそれより良いものは思い浮かばないという状況だったのですが、布を縫って立体布マスクを作るための型紙を見ているうちに、「2Dの布で立体マスクができるんだから、これをマネすれば良いんじゃないか」と思ってやってみたら、意外と良いものができました.
設計に当たって私がこだわったポイントは、3Dプリンターで作るのはフレームのみで、そこにキッチンペーパーを当ててマスクの代用にすることと、顔にあたる部分がキッチンペーパーで覆われていて使い捨てにできることです.
FUSION360で設計しました.左側の制作履歴を見るとわかりますけど、最初の頃は、3Dプリンターで立体的なものを作ろうとして失敗し、途中で投げた状態でした.
印刷します.使ったプリンターはFLSUN QQ-Sです.材料はTPUを使用しています.
ちょっと糸引きとかをクリーニングしました.マスクフレーム本体と、耳ゴムを付ける部品が二つ、ゴムで耳が痛くならないように、頭の後ろでゴムを引っ張る部品が一つ.赤い小さい部品は、別で作ったクリップで、PETGです.マスク部品は0.4mmノズルですが、クリップは0.2mmノズルでAnycubic i3 megaで作りました.
部品の連結にダイソーのネオジム磁石を使うんですけど、磁石をこの隙間からねじ込んでやります.部品制作後に無理やりねじ込むとかいう方法が取れるのも、TPUならではです.
耳ゴムの部品にも磁石をねじ込みます.ちなみに、入り口を狭くしているだけで、中には磁石が収まるスペースを確保してあります.
マスクフレームの上部には、顔に合わせて変形させられるように、太さ2mmのアルミ製の針金を入れます.これもダイソーで買ってきました.3種類くらいの針金で比較してみましたけど、2mmのアルミ針金が一番イイ感じでした.
針金を入れた穴にフィラメントの切れ端を入れて、ハンダゴテで溶かして埋めます.これで針金が出てくるのを防ぎます.
マスクフレームをクリップで固定することで立体化します.
クリップが破損した時に備えて、ヒモなどで固定するための穴をいくつか開けてあります.
耳ゴムを取り付ければ完成です.このゴムもダイソーで買ってきました.
マスクの代わりに使用するキッチンペーパですけど、私はこれが一番気に入っています.厚手の不織布タイプで、息がしやすい上に、顔へのあたりも柔らかです.
マスクの形にするには、まずキッチンペーパーの中央付近にフレームを当てます.
左右から折り込みます.この時に耳ゴム部品の磁石をくっつけたほうが作業しやすいかもしれません.
そのまま手を離さずに、上を折り込みます.
上下をひっくり返してから、下を折込みます.わかりにくいですけど、上の写真から上下反転しています.
これでマスクの形になりました.
写真に取りやすいように色付きの材料を使いましたが、もちろん白色でも制作可能です.
このような装着状態になります.ちょっとアレな見た目ですが、最近は個性的なマスクをしている人も見かけるので、白色で作れば、まあ許容範囲内かなと思います.
装着感ですが、普通のマスクに比べるとやっぱり重たいですね.樹脂製だし、磁石も入っているし.長時間、半日とか1日とかつけていたらどうなるかは、まだわかりません.ただ、息のしやすさは、普通のマスクよりも優れています.フレームのおかげで、息を吸った時に顔に張り付くことがないですし、息を吐いた時も全面から排気されるので、抵抗が少なく横からの息漏れもほとんどありません.あと、フレームの上部に入っている針金のキープ力が半端なく、鼻から頬の辺りまでしっかりと顔の形になります.息漏れの少なさと針金のキープ力のおかげで眼鏡が曇らないのはありがたいです.
最近ではマスク不足も一服した感があって、一時期よりは入手しやすくなっているようなので、タイミング的には今さら感がありますが、これがあれば「もしマスクが無くなったらどうしよう」っていう不安からは解放されますので、まあよしとします.
最後に、あくまでも「顔の前にキッチンペーパーを固定するためのフレーム」ということで、市販のちゃんとしたマスクと同等の機能性能は全く期待できません.せいぜい「自分がくしゃみをした時に周りに飛散する唾の量を少なくする」程度のものでしょう.それでも無いよりはマシと思えるときに使おうと思っています.
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